あえて無駄な会議をすることで新規事業を立ち上げた

座っている男性と女性、立っている男性で打ち合わせをしている会議室の写真

会社に勤めている以上、会議は不可欠でしょう。とは言え、労働時間、つまり会社としてのコストをかける以上、その意味や効率は問われなければなりません。いかに会議を効率化させるかは、大手に限らず、多くの企業が苦心しているところかと思います。

会議の効率化に必要なこととして、「参加者を厳選する」「決裁権のある人間が参加する」「議題を決める」「終了時間を定める」「次回までのアクションを明確にする」など色々ありますが、わたしたちも「ぼんやりとしたまま終わってしまって成果が見えなかった」会議をしていることがあり、上記のようなことを含め、実のある会議にするために日々改善を重ねています。

一方で、「司会がいて、議題が定められていて、コスト意識を持って取り組む」ことが、必ずしも「正解」とは言えないのではないか、と思うこともあります。枠組みがしっかりしていると確かに効率的なのですが、枠組みにとらわれて話の広がりが限定的になったり、肝心の議論が薄くなったり、各自の発言が最小限になったり。これがルーティン化してしまうと、単なる報告会で終わってしまいかねません。

わたしたちは、デザイン会社です。常に新しい視点やさまざまなアイデアを取り込みながら、お客さまに提供できるサービスを生み出していかなければいけません。「司会がいて、議題が定められていて、コスト意識を持って取り組む」会議も行ないますが、それがデザイン会社としてのクリエイティビティを発揮するための「足かせ」に感じることもあるのです。

そこでわたしたちは、「常に新しい視点やさまざまなアイデアを取り込みながら、お客さまに提供できるサービスを生み出す」ための会議を、別途定期的に開いています。

この会議では、「有意義な会議」のセオリーである「参加者を厳選する」「決裁権のある人間が参加する」「議題を決める」「終了時間を定める」は守っています。

しかし、「司会なし、議題なし、コスト意識なし」を信条としています。

まず「司会なし」。司会がいると、司会が適宜軌道修正しながら話が進むため、「話の腰を折る」「話が横道に逸れる」ことが少なくなります。しかし、腰を折ったり横道に逸れる時にこそ、思わぬアイデアにぶつかることがあるのです。また、司会がいないことで、いつでも誰でも司会になれるので、参加者の誰もが話の主導権を持つことができます。

「議題なし」も、「話の腰を折る」「話が横道に逸れる」と同じく、定めないことで予定調和でない議論に発展することを目指したものです。正直、どうでもいい雑談で終わることも少なくありません。「会議の効率化」とは真逆の状況です。全ての会議がこんな会議では、会社は回らなくなってしまうでしょう。でも、「どうでもいい雑談で終わってもいい会議」をひとつ設定していると、「面白い話があるんだけど、仕事にならないことだから話すのをやめておこう」と思っていたことでも話しやすくなります。そんな「ちゃんとした会議では話すまでもない話」に、実は新たなビジネスの萌芽が潜んでいることもあるのです。

「コスト意識なし」は、自由気ままにお金を使えるという意味ではありません。「それでいくら儲かるの?」「それがどうやってうちの売り上げにつながるの?」という話は無し、ということです。喫緊のマネタイズに気を取られすぎると、表向きには売り上げにつながらないけれど間接的・長期的にはプラスになるはずの貴重なアイデアを逃してしまいます。「どう考えてもお金にならない」とはじめは思っていても、しばらく放置していると「あ、このコンテンツは、あのクライアントの課題が解決できるぞ!」と突然可能性が開けることもあるのです。

そしてもうひとつ重要なのは、「好きなことを楽しんでやる」です。デザイナーであるわたしたちは、デザインが「好き」だから、今の仕事についています。単なる仕事として取り組むよりも、自分たちが楽しんだ方が、良いものが生み出せます。せっかく新たなビジネスを生み出すなら、「お金になるけどつまらない仕事」ではなく、「お金にならなくても面白い仕事」を増やそう。そんな気持ちで取り組むようにしています。

私たちもこの会議を始めて一年弱ですが、すでにいくつかの新規ビジネスが立ち上がり、クライアントに具体的なご提案も行ない、いくつかお問い合わせもいただいています。予想通り、なかなかお金にはならないのですが(笑)、社内の風通しが良くなり、空気が変わってきました。

会議の効率化に取り組んでも、いまいち成果に結びつかないのでしたら、非効率な「自由な会議」を始めてみませんか。期待通りの成果はなくても、「想定外の効果」はあると思います。