メタバースは流行ってないが、失敗でもオワコンでもない
コロナ禍で「メタバース」という言葉が脚光を浴びてから随分経ちますが、今もメタバースについての新たな情報は毎日のように出てきています。自治体が地方創生のツールとして使ったり、メーカーが商品としてアバター向けの3Dモデリングデータを販売したり、新たなメタバース空間でのサービスが発表されたり……と、企業や団体から発信されるメタバースの情報は途切れることがありません。
ただし、それはわたしがある程度メタバースに関心があり、普段からその手の情報にアンテナを張っているから感じるだけのことで、実生活の中で、意図せずともメタバースの情報に頻繁に触れる機会が多く、「何だか最近メタバースの話題が多いなあ」と感じている、というわけではありません。ですから、特にメタバースに関心のない多くの方にとっては、「何だか最近メタバースの話題が多いなあ」とは感じないことでしょう。
しかも、「企業や団体から発信される」メタバース提供側の情報は多い一方、メタバースのユーザーから発信される情報は、ほとんど目にしません。これだけ世の中にメタバース空間やサービスがたくさんなるのだからSNSなどで誰かが使っている様子を目にすることがあってもよさそうなものですが、見たことも聞いたこともないのです。
しかしわたしは「メタバースは流行っていない・オワコンだ」と言いたいわけではありません。メタバースは一部に熱狂的に支持している人たちや、期待通りの効果を上げている方々、大いに活用している企業・団体があるのは確かなようですが、「Facebookが社名を変える」ほどのビッグビジネスにはなっていない、というだけです。
「メタバースビジネスの事業化に9割が失敗」という2023年の調査結果があります。「話題作り」「流行に乗る」「若者の興味をひく」などといった、あまり必然性がなく、目的がぼんやりしていそうな事業化案ばかりで、先行事例にしても、なんらかの課題解決に最適な、正鵠を射たものがまだまだ少ない状況では仕方がないかもしれません。
実はわたしたちもメタバース事業に取り組んでいますが、メタバースありきでは提案したことはありません。クライアントが抱える課題解決の役に立たなければやる意味がないと考えているからです。
例えば「モデルルームを作りたいけどそこまでの予算がない」という建築会社であれば、VR空間の中に建ててお客さんに内覧していただいた方が安くつくでしょう。「工場見学を行ないたいが、見学者用の設備もないし、かと言って中に入ってもらうと危険だし……」という施設であれば、工場を3DCGで再現したバーチャル工場見学が解決方法になるかもしれません。
メタバースは、目的にかなっていれば、非常に有効なツールです。しかし用途は限られますので、メタバースありきで考えてしまうと企画が的外れになる可能性が高いのです。
ですから、メタバースをやけに強く押してくる「メタバースありきの制作会社」には注意が必要です。彼らはメタバースの事例を増やしたいだけで、あなたの会社の課題を解決したいとは思っていない可能性があります。本当にメタバースが課題解決のための最良の選択かどうか、発注をかける前にじっくりと検討してください。
メタバースは今後、適材適所で活躍することで、ようやく社会の中で本来の役割を担うようになっていくことでしょう。わたしたちもその一助として、クライアントの課題解決に最適なメタバースを提案してまいります。
もしメタバースの活用が視野に入ってきた際には、ぜひ当社にご相談ください。