「流行る流行語」と「流行らない流行語」の根本的な違いと、人々が求める「流行」

Adobe Fireflyで生成した、宙にキーワードやオブジェクトが集まったコンピュータグラフィック

2024年の流行語は、何でしょうか?

ユーキャンが毎年発表している流行語大賞では、ヒットしたテレビドラマの略称「ふてほど」が大賞に選ばれましたが、流行語として認定されたにも関わらず「聞いたことがない」と世間では冷たい反応が散見しております。

一方で、NETFLIXで多くの視聴者を獲得したドラマでのセリフ「もうええでしょう」がノミネートされていましたが、NETFLIXに加入していないわたしの耳に届いた流行語は、むしろ「ふてほど」ではなく「もうええでしょう」の方でした。

今に始まった話ではないですが、流行「語」と言いながら「言葉」ではなくモノや出来事が多く選ばれており、「アサイーボウル」などは確かに「今年流行ったスイーツ」として街中で目にすることも増えましたが、正直なところ、言葉であれば「目にする」ではなく「耳にする」でなければならないのでしょうか。

「耳にする」で言えば、ノミネートされた中で「確かによく耳にすることがあったな」と思ったのは「界隈」。一定のクラスタを指す便利な言葉として、使いやすい、使いたくなる言葉ですよね。「もうええでしょう」もそうですが、日常会話の中で使いやすい、使いたくなる言葉こそが、流行語と呼べる気がします。

そこで、Z世代での流行語のランキングを見ると、やはり「界隈」「もうええでしょう」がランキング。Z世代はネット経由で見聞きした情報にグッと偏るわけですが、「大人たち」が考える流行語と若者たちが思う流行語の重なるところが、本当に流行った言葉なのではないでしょうか。

そう思うと、NETFLIXという、誰もが見られるわけではない動画配信プラットフォームで視聴されたドラマのセリフが流行語になるというのも驚くべきこと。日本での加盟者数は1,000万世帯だと言われていますが、それでも日本国民の1/10以下なのですから、テレビのドラマやバラエティ番組でのセリフやギャグが流行語となっていた時代を生きてきたものとしては隔世の感があります。

趣味趣向も生き方も、すっかり多様化した現代において、日本全体を象徴する「流行」というものは生まれにくい世の中だと思いますが、「界隈」には「流行った」感じがあります。「50-50」には正直ピンときませんが、大谷翔平の存在が「昭和のスター」の如き国民的スターとなっていることを、好むと好まざるとに関わらず認めない人はいないでしょう。社会は多様化だけではなく、「分断」も強まっていますが、この「国民的スター」の存在や「界隈」のような「つながり」を謳うキーワードが流行った裏側には、誰かと共有したい、つながりたいという欲求、孤独への不安が日本社会の中に潜んでいるからではないかと思うのは、果たしてわたしだけなのでしょうか。

「流行」には、自然に流行ったものと、広告やメディアが「流行らせた」ものがあります。前者は人々が共有やつながりを求める限りこれからも生まれ続け、後者はこれからはもう生まれてこない、それこそ人々が「もうええでしょう」と思っているものなのかもしれませんね。

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