「シン・リベンジ消費」を読み解き、非合理な社会を生き抜く

カラフルなテントとたくさんの人々で賑わう海外の市場の写真

街中は、大変な数の人で賑わっています。

年末年始に関わらず、繁華街は人でいっぱい。人気のお店は常に行列。イベントがあれば、労を惜しまず人が集まってきます。

コロナ禍で言われた「不要不急の外出」が、今まさに花盛りといった様子。それでも1年ほど前までは、復活してきたインバウンドの観光客が大半を担っている印象がありましたが、現在はコロナ以前と比べても、日本人の比率が高いように思えます。

コロナ禍で我慢していた人たちが消費に走る「リベンジ消費」という言葉が使われたのはすでに懐かしい思いがしますが、この言葉が使われなくなって以降が、本来の「リベンジ消費」ではないかと感じるほど、人々は街へ繰り出し、楽しんでいます。

物価高のダメージは日本人の財布を締めることになりましたが、生きていくために必要な生活費には厳しくなる一方で、「推し活」「自分へのご褒美」「コト消費」には大胆に使う文化はさらに勢いを増しているのではないでしょうか。

「シン・リベンジ消費」とでも言いましょうか。旅行するにもホテルも新幹線もチケット争奪戦の様相を呈している現在、完全に割を食ってしまった印象があるのは、「VR」です。

MetaがFacebookから社名を変更したのはコロナ禍の2021年。VRゴーグルを発売し、世界は「リアル」と「バーチャル」が共存する時代を迎えるのか、といったムードがIT業界内で漂いつつありました。しかし、Metaしかりアップルしかり、VRに本腰を入れた企業ほど、のちに現れた「生成AI」ブームに乗り遅れてしまい、存在感を著しく薄めてしまいました。

状況としては、VRがAIに切り替わったように見えます。実際そうなのでしょうが、VRの伸び悩みは、先に書いた「シン・リベンジ消費」を迎えた人々の心理の中にあると思っています。

販促会議2025年1月号の特集は、「イマーシブ・プロモーション」。「イマーシブ」という言葉は「没入感」という意味で使われますが、これが2、3年前であれば、イマーシブといえば「メタバース」を指していたはずです。ゴーグルをはめ、架空の世界に自分が入り込んだような感覚に浸ることができる仮想空間こそが、現代のイマーシブだったのではないでしょうか。しかし、販促会議で取り上げられるイマーシブなプロモーションは、TSUTAYAの店舗で行われた「ハローキティ」のリアルイベント、サントリーが仕掛けた小学生時代の友人宅を現実に再現する企画、辛ラーメンのポップアップ(販促催事スペース)などなど、ほとんどがリアルな仕掛けで、オンラインでの施策は副次的なものでしかありませんでした。これは、3年前であれば「遠方の人がオンラインで参加できる仕掛けも必要」と考えられていたものが、「遠方でも来たくなる特別な体験をリアルに立ち上げる」を優先するように変わってきた、ということではないかという気がします。

2024年は、「オフィス回帰」の機運が高まった1年でもありました。バーチャルオフィスがあれば直接会う必要がないし感染症のリスクもない、と言う人たちもいましたが、インフルエンザが流行り、感染症リスクは高まる中でも、なぜか「やっぱりオフィスがいい」という、一見非合理な結論に辿り着いた企業が少なくなかったのです。

VRにおいて、そして生成AIにおいても、この人間が持つ「非合理性」には、まだまだ迫ることができていません。逆に言えば、「非合理性」こそが重要で、「シン・リベンジ消費」の源泉なのではないかと思います。プロモーションやマーケティングを考える上で、非合理性が重要であることは言うまでもないことですが、ここまで「合理性」の至らなさがあからさまになったのは、新しいのではないでしょうか。

VRや生成AIが炙り出した人間の「非合理性」を追求することが、これからのプロモーションやマーケティングの最重要課題でしょう。

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