「アクティベーション」とは「ブランディング」の復権?
雑誌「販促会議」2025年2月号の特集は、「プランナー・クリエイターに求められる「売り」へつなげる意識とスキル」と題して、「広告」と「販促」が、それぞれ分離していては「売り」につながらなくなっている現状と、そのために広告会社やPR会社など、プロモーション・マーケティングに関わる企業に必要となる考えや能力についてまとめられていました。電通・博報堂をはじめ、各社が今何を考え、どんな取り組みをしているのか、それぞれ見開きで完結する形で、業界を俯瞰するように淡々と編まれていることで、互いに重なり合うところが浮かび上がってきて、自然とプロモーション・マーケティングのトレンドが見えてくるような特集になっていました。
大ざっぱにまとめると、「広告だけでは売りにつながらない。販促だけでも、短期的な売りだけではクライアントの課題解決にならない。長期的な売りを生み出すには広告と販促を両輪にして、ユーザーが買いたくなるブランド構築をしなければいけない」というような話です。これだけ聞くと、そんなに新しい話とも思えませんね。随分前から企業とユーザーの関係構築を深める「エンゲージメント」という言葉は使われていましたし、「ブランディング」とは、総合的なプロモーション・マーケティングを指していたはずです。実際、この特集記事に掲載されている各社の取り組みは今に始まったものではなく、数年がかりで磨かれてきた中で現在地に辿り着いています。
特集記事では「アクティベーション」という言葉が頻出します。狭義にはサンプリングイベントやポップアップストアなど、従来「販促」と呼ばれるものを指すこともありますが、記事中では「ユーザーの行動変容を促す方法」として捉えられていますので、まさに「販促」を「販促」だけで実行しているだけでは本当の課題解決(売り)につながらない、ということですね。
一方、この特集に掲載されている記事は、先に記した電通・博報堂など、「大きな会社」から発信される情報ばかりです。じゃあ同じことが、中小零細企業やB to B企業にも当てはまるの?というのは、多くの方の疑問だと思いますが、わたしは、当てはまると思います。
実際のところ、広告を特効薬のように「使えばすぐに効果が出るもの」と誤解されているケースはいまだに少なくありません。「広告なんて出しても効果はない」と考えられている方の多くは、「特効薬」だと誤解されているように見受けられます。一方で販促をピンポイントで捉え、広く波及する持続的な施策の一環として行なっていないケースもままあります。
ずいぶん前、それこそ「ブランディング」という言葉に説得力があった時代には、もう少し違っていたように思いますが、「ブランディングなんて広告会社のおためごかしだ」と感じられる、つまり具体的な成果が得られなかった時代を経て、ネット広告などにおける数値の可視化によって、直接的な成果を求める流れが強まることで、広告も販促も短期的な成果を生み出す「とんぷく薬」のように考えられることが常態化してしまったのが今のプロモーション・マーケティングの実情だと思います。
そういう意味では、広告業界の上流で起こっている「アクティベーション」の潮流は、広告も販促も思ったような効果が出なくなってしまったことによる「ブランディング」の復権とも見えてきます。つまり、「広告も販促も思ったような効果が出なくなってしまった」のならば、それはどんな会社にとっても大きな意味がある、ということです。
詳しくは販促会議をお読みいただければと思います。正直、わたしたちは掲載されている企業のように立派な組織と理論だったメソッドがあるわけではありませんが、広告にも販促にも、おそらくみなさまよりも一日の長があります。大きな課題は大きな会社に、そうでもない課題は、そうでもないわたしたちのような会社にご相談ください(笑)。