常に新たなファンを生み出し、新鮮であり続ける「ハイチュウ」を目指そう
森永製菓のソフトキャンディ「ハイチュウ」が、来年50周年を迎えるそうです。
わたしはハイチュウと同じ1975年生まれ。でも、ハイチュウの存在に気づいたのは小学校に上がって以降でした。飴と違って弾力があるけど、グミよりももっとやわらかい。ガムのつもりで噛んでいると、口の中に広がる甘酸っぱさを保ちながら、だんだん溶けていって徐々に歯ごたえが薄れていく……初めて食べた時の新鮮さが今でも忘れられず、時折どうしても食べたくなって買ってしまうお菓子です。
そんなハイチュウが、ある日お店のお菓子コーナーに並んでいるのを見ると、パッケージの正面に、大きくアルファベットで「HI-CHEW」と書かれていました。商品名だから当たり前なのですが、あれ、カタカナで書いてなかったっけ?
実は今年2月にパッケージがリニューアルされた際に、英語表記に変えたのだそうです。今や世界各地で販売される人気商品であり、かつ、日本でも外国人観光客のみなさんが買われるので、英語表記にすべきと考えたようです。
表記変更が功を奏したのか、リニューアル後は売り上げも想定以上に伸びているそうですが、さらに想定外の効果として、Z世代の若者が買ってくれるようになったとのこと。日本の若者の間では「ハイチュウは小さい子がたべるもの」というイメージが強かったらしく(そうとは知らず食べてたおっさんがここにいますが・笑)、英語表記になったことでイメージが変わった、ということだそうです。
森永製菓にとっても、50年近い歴史のある商品がZ世代の若者から好感を得られたことは、とても大きな成果だったのではないかと思います。業界によっては、歴史が長くなればなるほど、昔からのユーザーやファンだけに向かって商売を続けている会社が多かったりしますが、それはとても危険なことです。人口推計を見ると、50代までは、おおむね若いほど人口が少なく、全体で人口が減少している中、増えているのは75歳以上だけ。年配の人ほど資産を持っている比率が高いこともあわせると、妥当な戦略と見えてしまいます。
しかし現在の日本の状況を招いているのは、そうやって「昔からのユーザーやファンたちとの間だけで商売を回す」ことを続けてきてしまったからではないでしょうか。「政治とカネ」の問題も同様です。社会が大きく変わっていく中で、変化を避けた内向きな商売を続けることはとても危険です。
菓子メーカーは、お菓子の味を、時代に合わせて少しずつ変えている、という話を聞いたことがあります。食べている人が気づかない程度に、時事刻々と変化する消費者の趣味趣向や流行を捉えて、いつの時代でも「美味しい」と感じてもらえるように。わたしが覚えている「初めて食べた時の新鮮さ」を裏切らない今のハイチュウも、きっと当時とはずいぶん変わっているのでしょうけど、メーカー側の不断の努力がなければ、「昔は美味しいと思ってたけど、今はちょっと……」となっているのかもしれません。
常に新たなファンを生み出し、常に新鮮であり続けること。一気に変われなくても、少しずつでも変化することで、前進していきたいものです。