「公式アカウント」に依存せず「自分のサイト」をしっかり育てよう
「Web2.0」という言葉がもてはやされた約20年前。それまでのインターネットでは、情報発信は「発信者から受信者」という一方向に固定されていたのが、すべての人が発信者でもあり受信者でもある流動的な状態になっていきつつありました。mixi、Twitter、Facebookなど、SNSが次々と「大勢の人が集まる場所」となり、「バズる」という言葉が流行り、企業はお客さんへの情報発信やファンづくりも、SNSの中でどのように行うことができるかが強く問われるようになりました。
このことがもたらした影響の一つに、「自分のサイトは不要」という動きがあります。それまでは、どんな企業でも自分たちが情報発信するための場所を、ネット上に作ることは「自分のサイトを作る」こととイコールでしたが、やがてそれだけでは足りず、SNSなどのサービスで「公式アカウント」を作り、自分のサイトとは別に情報発信することが求められるようになり、やがて「自分のサイト」よりも「公式アカウント」の方が比重が高くなり、業態によっては「公式アカウント」だけで十分事足りてしまうため、「自分のサイト」を最小限まで小さくするか、放置してしまう状況も多く見受けられます。
さて、あなたの会社は、「公式アカウント」をいくつ持っているでしょうか。YouTube、X、Instagram、LINE……いずれも企業がうまく活用するに越したことはありません。あえて使わないという選択肢はあると思いますが、知らずに使っていないとしたら機会損失になっている可能性があります。
では、もしこれらのサービスが明日から「終了」してしまったら、あなたはどのようにしてお客さんとの接点を作りますか?
あなたが「公式アカウント」を作っているすべてのサービスは、いち企業による「営利目的」のサービスです。運営会社の都合で突然サイトが閉鎖されてしまう可能性はゼロではありません。XがTwitterに突然変わったことも、「ある日Twitterがこの世から消えた」と言えるでしょう。実際、運営方針が大きく変わり、ビジネス用途での価値も変わりました。イーロン・マスクの過激な行動や発言を見ていると、ある日Xにアクセスできなる可能性も考えておかなければならないかもしれません。「インプレゾンビ」と呼ばれる、他人の投稿を無断で転用し、無関係な画像などを貼って閲覧数を稼ぐ広告収益目的だけのアカウントなども増えていることも、不安要素としては小さくないでしょう。
ネット広告の世界では、「サードパーティクッキーの廃止」について声高に議論されています。企業がお客さんに広告を配信する際に、これまでGoogleをはじめとする広告配信会社が、広告主の広告配信先を、「サードパーティクッキー」という、ネット経由で得た個人情報を活用して絞り込んでいたのですが、今後それができなくなるので、各社サードパーティクッキーを使わないサービスの開発に躍起になっています。同等のサービスが提供されるのかもしれないし、されないかもしれない。広告配信会社はもちろん、利用する企業にとっても、依存度に従って被害も大きくなるおそれがあります。
昨今、飲食店の公式サイトの情報不足が気になります。サイトの作りも簡易で、会社概要と店舗情報、あとは代表的なメニューが数点載っているだけというパターンが少なくありません。飲食店の口コミサイトに行けば情報が載っているということなのですが、このサイトがサーバの不具合などで閲覧できなくなったらどうするのでしょうか。
最近でも、医師がGoogleマップへの口コミ掲載によって悪評が広がったということで提訴していましたが、果たして問題があったのは、Google側だけでしょうか。
今の世の中、無料もしくは安価で使える便利なサービスが山のようにあります。それらを活用することは非常に大切ですが、結果として自分たちに何が「蓄積」できるかは、考えておくべきでしょう。ブログサービスに記事を書くのも、動画配信サービスに動画をアップするのも、それそれのサービス提供者側を利するためではなくて、あなたを利するものでなくてはなりません。あなたが手塩にかけて作ったコンテンツが、ある日「仕様変更」「サービス終了」によって価値のないものになってしまわないかどうか冷静に考えた時、それは自分のサイトで発信すべきかもしれませんし、「〇〇ではこんなコンテンツにしないとバズらない」といったピンポイントのルールに従わない方がいいかもしれないのです。
もし今、あなたの会社が「公式アカウント」への依存度が高いとしたら、そろそろウェブサイトをリニューアルして、「自分たちで発信する情報」を充実させるべきタイミングかもしれません。
サイト改善のご相談、お待ちしております。