AIバブルは弾けたか? 今はAI時代の「始まりの終わり」

Adobe Fireflyで生成した、大きな虹色の記法が中心に浮かんだ画像

2022年にセンセーショナルに登場し、世間をあっと言わせた生成AI。平易な言葉で指示すると、ものの数秒で文章や画像を作り出す様子は衝撃を与え、翌年には大手企業が先を争って生成AIへの取り組みを主眼に置くようになり、サービスは百花繚乱。今やスマホやパソコンに標準装備されることが必須条件となりつつあります。

しかし一方で、生成AIの便利さを十分に活用できている人は、まだごく一部に限られているようです。

日本での個人の利用率は、総務省による2024年7月発表の調査で1割以下。 ChatGPTで知られるOpenAI社を産んだアメリカでも5割を切っています。日本の企業での活用率も、帝国データバンクによる2024年6月〜7月の調査では2割以下。世間の話題と実情には、かなり大きなギャップがあるようです。

生成AIを動かすためにはコンピュータが必要ですが、その心臓部に当たる半導体の製造で圧倒的なシェアを誇るNVIDIA社は、生成AIへの注目によって一気に業績を伸ばし、併せて株価も急激に伸ばしました。そんなNVIDIAの株価が、2024年9月初めに急落。米株価も急落していたことも含め、株価の変動はさまざまな要因が絡み合って起きるものですが、その中に、これまでの生成AIへの過剰な期待による過剰な株価上昇が醒めた、という要素も、少なからずあったことでしょう。

「生成AIはバブルだったのか」

「生成AIはバブルは弾けたのか」

そんな言説もちらほら目にするようになりました。とは言え、先にあげた世間一般の活用率を見れば、いわゆるアーリーアダプター層や、先進的な技術と相対しているIT企業以外の人たちからすれば、1年以上前から「これは実態を伴っていないのではないか」と感じていたのではないでしょうか。なぜなら、わたしたちは、既に似たような経験を繰り返しているからです。

4K。

5G。

NFT。

メタバース。

いずれも、社会が劇的に変わるような謳い文句と共に登場しましたが、世間の期待ほどのインパクトが与えられず、ほとんど注目されることは無くなっていきました。

しかし、誰もが日常生活が激変するほどのインパクトではなくても、上記の例も含めて、社会に緩やかな変化を起こしているのは確実です。4K映像の鮮明さは医療現場を含む映像情報の豊富さで貢献し、5G通信は次に来る6Gへの橋渡しとして大容量・高速・低遅延データ通信の有効性を検証する土台となり、NFTは個人とデータを紐づける重要な選択肢として機能し始め、メタバースは現場での研修や技術継承に活用の可能性が見出されつつあります。

AI技術も、すでに個人や組織人の利活用にとどまらず、あらゆる機器やサービスに導入されており、わたしたちの好みに関わらず、いつもどこかで恩恵を受けている時代になっているのです。

今年上映された、ジョージ・ミラー監督による映画「マッドマックス:フュリオサ」。主人公フュリオサの、少女時代からの約10年間が描かれる場面で、少女時代を演じた女優(アリーラ・ブラウン)と、成人フュリオサを演じた女優(アニャ・テイラー=ジョイ)が別人であるにも関わらず、その成長過程は、実に自然につながっていて、過程を演じていたのはどちらの女優なのかわからず、「アリーラ・ブラウンが、いつの間にかアニャ・テイラー=ジョイになっていた」のです。演技やメイクの賜物かと思いきや、どうやらAIの賜物だったようです。

バブルとしてのAIは、まもなく終焉を迎えるのかもしれませんが、それはAIの終焉ではなく、いよいよわたしたちが息をするようにAIを使い始めていることの証左なのではないでしょうか。

そう、インターネットにもバブルがあったように。

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