デューク・エリントンの楽曲がパブリックドメインに。ところで彼はどの曲を作曲した?
今年の初めに、初期のミッキーマウス(「蒸気船ウィリー」)の著作権が切れ、パブリックドメインになるという話題に触れました。著作権は、著作物が一定期間ののち、自動的に切れることで、誰もが自由に使えるようになります。今年、初期のミッキーマウスがパブリックドメインになったように、当然来年もパブリックドメインとして扱われる著作物があります。そのうちの大物の一人として、デューク・エリントンが挙げられています。
言わずと知れたジャズの世界における神様のような存在。帝王として崇められたマイルス・デヴィスも、彼がこの世を去った1974年に「He Loved Him Madly」という曲を発表していたほど。その2年後にスティーヴィー・ワンダーが発表した「Sir Duke」も有名ですね。
しかし、エリントンの功績の大きさについて、詳しく知る人が多いわけではありません。まあ、なんといっても死後50年が過ぎるほどの昔の人です。モダン・ジャズと言われるハードバップ、その先祖であるビ・バップが誕生するさらに前、スイング・ジャズと呼ばれるビッグ・バンドによるダンス・ミュージックだった時代の立役者です。
何が言いたいのかというと、前述のGigazineの記事に「A列車でいこう」をエリントンの著作物と書いていますが、この曲はエリントン楽団のピアニストであるビリー・ストレイホーンの作曲だということです。
ストレイホーンは1967年にこの世を去っていますので、著作権はすでに切れていますから、特に問題はないでしょう。しかし例えば「スイングしなけりゃ意味ないね」は作詞をアーヴィング・ミルズが行なっており、彼の死去は1985年です。
誰もが知るエリントンの代表曲の一つ「キャラバン」は、エリントンと彼の楽団のトロンボーン奏者であるファン・ティゾールによる作曲で、彼の死去は1984年。作詞はこちらもアーヴィング・ミルズ。「ソリチュード」もミルズが作詞に関わっています。
「昔は良かったね」は同じエリントンでも息子のマーサー・エリントンが作曲したもので、彼は父親の20年後にこの世を去っています。
ポピュラー音楽において有名なミュージシャンが作詞・作曲も行なっている、ということは、昔から当然のようにあったものではなく、リーダーの要望によって作曲家・作詞家が制作することのほうが一般的であったといっても過言ではないでしょう。「エリントンの曲だからパブリックドメイン」と早とちりせず、作詞・作曲者をよく調べてから使用する必要があります。
また、作曲の著作権が切れていても、演奏家の権利が切れているとは限りません。例えば最近録音された「ソフィスティケイテッド・レディ」がパブリックドメイン扱いになるわけではないので、その演奏がいつ録音されたものなのか、よく調べておきましょう。
さて、今年も残りわずかとなりました。あなたにとって、今年はどんな年でしたか?順調だったとしても、苦難続きだったとしても、このコラムを読んでくださったあなたにとって、2025年が良い年になることを、切に祈っております。
それでは、どうぞ良いお年をお迎えください。