あなたは言語思考タイプですか?それとも、視覚思考タイプですか?
社会は、主に多数派の人たちが生活しやすいように整備されがちです。五体が自由に使える人。右利きの人。異性愛者の人。それ以外の人たちは、どんな時に何が困るか、ということが理解されないことによって不便を被ることが少なくないことでしょう。わたしは右利きなのですが、左利きの娘から、文具の使いづらさや飲食店での皿とカトラリーの配置の違和感など、言われて初めて意識させられることが少なくありません。
学校の受験制度も実は多数派向けになっていて、受験における問題のほとんどは言葉を駆使して解いていくものですが、それは「言語思考タイプ」の人にとっては適切でも、「視覚思考タイプ」の人にとっては大変大きなハードルとなってしまう……というようなことが、「ビジュアル・シンカーの脳 「絵」で考える人々の世界」という本に書かれていました。
著者のテンプル・グランディンは、自閉症スペクトラムを持つ動物学博士。4歳になるまで言葉が喋られず、8歳になるまで字が読めなかったそうですが、それは世界を言葉ではなく「絵」で理解していたからだというのです。その後もグランディン氏は絵で考えることが得意で、言語思考タイプの人が見たことや考えたことを言葉に置き換えることを、絵に置き換えて考えるのだそうです。
この本を読んでいて気づいたのは、わたしたちの会社も、「視覚思考タイプ」が多いのではないか、ということ。例えばとあるお仕事の依頼をクライアントから受けた時、社内で提案を募ると、多くのスタッフは早速形のあるデザインを作って持ってきます。なぜその形になったのか、色使い、情報の配置、それぞれに理由はあるのですが、それは言葉として考えたわけではなく、「絵」で考えながらその理由にたどり着いているのです。言葉から考えるか、絵から考えるか、最終的に絵が必要なら、絵から考えたほうが早いですよね。もちろん、クライアントに提案する際には言葉も必要なのですが、登り始める山の入り口が違うだけで結論は同じですから、それは後からいくらでも説明がつけられるのです。いや、もし言葉から考えてしまうと、8合目で止まってしまうものが、絵から考えレバ頂上までたどり着ける可能性は高くなるのです。
「ビジュアル・シンカーの脳」には、自分が「視覚思考タイプ」なのか「言語思考タイプ」か、その傾向を知ることができる簡単なテストがついています。「考える時には、言葉ではなくおもに絵を使う」「音楽か美術か機械が得意」などの18の質問に「はい」か「いいえ」で答え、「はい」の数が10以上あると、「視覚思考タイプ」である可能性が高いというものです。
質問は抽象的なものも多く、「どっちとも言えるなあ」という項目も少なくないのですが、社内で全員に答えてもらったところ、やはりはっきりと、「視覚思考タイプ」寄りが多数派だということがわかりました(ちなみにわたしは言語思考タイプ寄りでした。こんなコラムばっかり書いてるんだからそうなのでしょう・苦笑)。
もちろん、このテストの信憑性はわかりませんし、本書でも、言語思考・視覚思考と明確に分かれるのではなく、無段階のグラデーションの中で、どちらの傾向がより強いか、どちらがより得意か、というものであることも書かれています。本書に例示されている、スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックの名コンビのように、互いが協力し合うことで、どちらか片方に偏っていては実現できなかった大きな成果を生み出すことができるのです。
わたしたちも、言語思考の得意なメンバーと、視覚思考の得意なメンバーで協力し合いながら、クライアントに喜んでいただける、優秀なクリエイティブを生み出していきたいと思います。
みなさんもぜひ、自分や周りの人が言語思考か視覚思考か考えてみて、それぞれの才能がどう活かすことができるのか、考えながら仕事に取り組んでみてはいかがでしょうか。